雑事閑談

大きな器と小さな器

 私の研究室には観葉植物がある。といっても、週に何回か少し水をやるだけで、ほとんど手入れもせず、ほったらかしになっている。それでも、暑い夏や寒い冬にも枯れずに、時には花(のようなもの)をつける非常に生命力の強い植物である。この観葉植物の名前は、「Song of Jamaica:ソング・オブ・ジャマイカ」。枝を適当に切って、挿し木をすると簡単に鉢を増やすことができるので、今では7鉢にもなってしまった。
最近、そのジャマイカを見て気が付いたことがある。同じ時期に同じような太さの枝を挿し木したものでも、すくすくと成長し、上にどんどん伸びるものと、あまり上に伸びずに成長が止まってしまうものがある。床に置いたものは、どんどん成長し、本棚に置いたものは、あまり成長しなかった。ちょうど按配が良かったので、あまり気にも留めなかったのだが、ふとした際にそれに気付き、もしかしたら太陽光の当たる加減かと思って位置を変えてみた。しかし、どうもその所為ではないようだった。
 どうやら、鉢の大きさに原因があるようだ(考えてみると、そりゃそうなのだが)。本棚に置く鉢は、大きいと置けないので、それなりに小さなものを使っている。床に置く鉢はどっしりと大きめなものになる。鉢にはその大きさに応じた土が入っており、土にはそれに応じた養分が入っている。つまり、大きな鉢にはより多くの養分が入っていたことになる。そして、鉢の中の土に含まれていた養分を吸ってしまうと成長が止まる。あるいは、水や養分を与え過ぎると、自力で養分を吸い上げようとする本来の力を失ってしまう。
 これって人間と同じなんじゃないのか?「Song of Jamaica」という人間を大きく育てるためには、大きな鉢と適時を得た養分の補給、さらには鉢替えをする必要がある。学生を指導するという立場にある私は、どれ位の鉢の大きさなのだろうか?鉢の中には多様な栄養素が豊富に入っていたのだろうか?そして、枯渇することなく鉢の中に養分を補給し続けられているのだろうか?
「Song of Jamaica」から、「器をおおきくしろ!」というメッセージをもらった。

 

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